DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?推進の必要性や流れをわかりやすく解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して企業や社会の仕組みを根本から変革することです。効率化だけでなく、ビジネスモデルや働き方を進化させるために、DXは欠かせません

「DXに取り組まないと市場から取り残される」と不安に感じながらも、具体的にどうすればいいのか、何から手を付ければいいのかわからず、表面的な取り組みしかできていない企業も少なくありません。

本記事では、DXの定義や必要性、導入のステップやメリットをわかりやすく解説。DX推進支援の専門家として積み重ねてきたノウハウを、余すことなく公開します。DXを推進したい経営者や担当者の方に向けて、実践のヒントをお届けします。

DXとは

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して企業や社会の仕組みを根本から変革することです。単なる業務のデジタル化にとどまらず、ビジネスモデルや組織の在り方を変えるのがDXです。例えば、デジタル技術を使って働き方を変えたり、既存のビジネスに新たな付加価値を付けたり、新たなビジネスモデルを生み出したりします。

DXを進めることで、業務効率の向上やコスト削減だけでなく、顧客体験の改善や新しいサービスの創出ができます。また、競争力の強化や経営スピードの加速にもつながり、企業全体の成長を後押しします。

近年は市場環境の変化が激しく、VUCA時代と呼ばれる予測困難な状況が続いています。その中で企業が持続的に成長するためには、既存の仕組みに依存していてはいけません。DXを通じて、社会の変化に柔軟かつ迅速に対応できる体制を整えることが不可欠です。

DXの身近な例

DXと聞くと難しいものに感じるかもしれませんが、実は私たちの身近にも、DXの例はたくさんあります。飲食店や病院、駅などで、私たちはDXの恩恵を受け、より便利な生活が実現しています。DXの身近な例を見ながら、DXへの理解を深めていきましょう。

飲食店

従来は店員がハンディー端末で注文を受けていましたが、今ではQRコードやタブレットで客自身が注文できるようになりました。注文は厨房に即時連携されることで提供がスムーズになり、客席でのキャッシュレス決済により会計も簡単になりました。

病院

紙のカルテから電子カルテに移行し、診察室で患者情報を即時に確認できるようになりました。医療の質とスピードが向上し、待ち時間の短縮や情報共有の精度向上につながっています。

スーパー・小売

これまで発注は経験則に頼っていましたが、POSデータやAI分析により自動化されています。データに基づき発注することで精度が高まり、在庫の過不足を防ぎやすくなりました。

交通

紙の切符からICカードやアプリに変わり、乗車や決済がスムーズになりました。加えて、アプリで混雑状況をリアルタイムに把握できるようになり、利用者はより快適に移動できるようになりました。

このような身近な例を知ることは、DXを理解するために役立ちます。こちらの記事ではDXの身近な例を、私生活で私たちが触れているものと、企業人として触れているものに分けて20紹介しています。

概念的な説明だけではいまいちピンとこない方、もっとわかりやすくDXを説明してほしい方は、ぜひお読みください。

DXの身近な例20選を消費者と企業の目線から紹介!事例に見るDX推進のポイント

DXとIT化やデジタル化の違い

DXを正しく理解するためには、デジタル化やIT化との違いを整理しておく必要があります。DXは「デジタル化→IT化→DX」の順番で進んでいくためです。

まずデジタル化(Digitization)は、紙やアナログの情報をデジタルデータに置き換えることです。例えば紙の請求書をPDFに変えることや、フィルム写真をデジカメで保存することがこれにあたります。

次にIT化(Digitalization)は、デジタル技術を活用して業務を効率化する取り組みです。Excelを使った集計や会計ソフトの導入、行政手続きのオンライン申請などが具体例です。業務プロセスはそのままに、デジタルを使ってスピードや効率を高めます。

DX(Digital Transformation)は、さらに大きな変革を意味します。単なる効率化にとどまらず、ビジネスモデルや働き方そのものを作り変えることが、DXの目的です。例えば、対面販売に依存していた企業がECサイトとデータ分析を活用し、新しい売り方を実現するというように、DXではビジネスの在り方そのものを大きく変え、改善します。

端的にまとめると、デジタル化は書類のようなアナログデータをデジタルデータに変換すること、IT化はアナログだったプロセスをデジタル化することにより効率化することといえます。そして、これらを経て働き方やビジネスモデルそのものを変革することがDXであり、DXが最も上位互換といえるのです。

DXの定義

DXとはデジタル技術を使い、働き方やビジネスモデルを変革することです。では、DXは誰が生み出した言葉なのかご存じでしょうか。ここでは、DXの発祥と定義について解説します。

エリック・ストルターマン教授による定義

DXという言葉を初めて提唱したのは、当時スウェーデンのウメオ大学教授であったエリック・ストルターマン氏です。彼は2004年に発表した論文『Information Technology and the Good Life』の中で、DXを「the changes that digital technology caused or influences in all aspects of human life」と説明しました。これは日本語に訳すと「デジタル技術によって人間生活のあらゆる側面にもたらされた、あるいは影響を与えている変化」という意味です。

この定義を踏まえると、DXとは単なる業務効率化にとどまらず、デジタル技術による環境変化を受けて人々の生活や働き方の価値を向上させる取り組みだと理解できます。

例えば、インターネット通信やクラウド技術の普及によってリモートワークが実現し、働く環境そのものが変化しました。その結果、柔軟な働き方が可能となり、働くという体験の価値が大きく高まったのです。

さらにストルターマン教授は2022年にDXを再定義し、行政、企業、産業といった多様な領域に適用される概念として位置づけ直しました。これにより、DXは社会全体に影響を及ぼす普遍的な変革のキーワードとして、広く使われるようになっています。

企業の定義

企業におけるDXは、経済産業省が2018年に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」で明確に示されています。そこでは、DXは次のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
出典:デジタルガバナンス・コード2.0(経済産業省)

簡単に言えば、企業が変化する市場や顧客の要望に対応しながら、デジタル技術を駆使して企業価値を高める活動がDXです。

例えば小売業では、POSデータやAIを活用した需要予測により発注精度を向上させ、無駄な在庫を減らす取り組みが進められています。製造業ではIoTを用いて設備の稼働データを収集し、故障の予兆を検知することで生産効率を改善しています。

このように企業のDXは単なる業務効率化ではなく、製品やサービスの形そのものを変え、組織や企業文化にまで影響を与えるものです。デジタルを起点とした抜本的な変革を行うことで、企業は激しい競争環境の中でも優位性を保ち続けることが可能になります。

DXの変遷

経済産業省が2018年にDXレポートを発表したことで、DXという言葉は日本に広まり浸透しました。以降も経済産業省はDXレポートを改訂し続け、DXの定義やトレンドは少しずつ変化していきました。

2018年『DXレポート』

経済産業省はDXレポートの中で、「2025年の崖」という問題を提起し、警鐘を鳴らします。レポートの中で経済産業省は、老朽化システムの維持困難、IT人材の不足、セキュリティリスクなどの課題を指摘。これらに対応できなければ世界的なデジタル競争で敗北し、約12兆円の経済的損失が発生すると警告しました。

2020年『DXレポート2』

コロナ禍でデジタル移行が加速する中、ITシステムだけでなく企業文化そのものを変革する必要性が強調されました。企業が市場における競争力を維持・向上するには、市場変化に俊敏に対応できる体制づくりが必要とされます。

具体的にはテレワークや電子契約など、ITインフラや就業規則に関するルールを柔軟に変更することで、環境変化に対応できるとされています。

2021年『DXレポート2.1』

経済産業省は、ITシステムのユーザー企業とベンダーの依存関係がDX推進を阻害していると指摘します。ユーザー企業はベンダー企業に対し、システムの導入や運用委託によるITコストの削減を、ベンダー企業はユーザー企業に対し、システムの利用や運用受託による低リスク長期安定のメリットを、それぞれ享受しています。

しかし、このような関係性は「ユーザー企業とベンダー企業という区別」が残存するレガシーマインドにしばられたものだと、経済産業省は指摘。コスト削減に偏らず、デジタルを活用した価値創出により、他社や顧客とつながるエコシステムを形成する必要があると示しています。

2022年『DXレポート2.2』

デジタル産業への変革を掲げ、経済産業省は次の3つの行動指針を提示しました。

  1. 効率化ではなく収益向上にデジタルを活用すること
  2. 経営者が戦略だけでなく行動指針を示すこと
  3. 共通の価値観を持つ企業同士が協働すること

3つ目の「共通の価値観を持つ企業同士が協働すること」について、個社単独でのDXは困難であるため、企業同士の協働が必要だとされています。そのためには経営者が自ら自社の価値観を社外に向けて発信し、同じ価値観を持つ同志を集めることで、多大に変革を推進できるとされています。

このように、DXのトレンドは経済産業省の発表するDXレポートにより変遷し、ブラッシュアップされてきました。注目すべきは、「DXは個社単独では成し得ない」という点です。ユーザー企業とベンダー企業、共通の価値観を持つ企業同士の協働など、DXレポートでは企業間の協働・協創が強調されています。

これは、ITシステムを提供するベンダー企業や、市場を推進する大企業だけの話ではありません。例えば自社単独では困難として、DX推進を諦めている中小企業も、DXに精通した企業の支援サービスを活用すればDXを推進できます。支援を通して全社のDXリテラシーを高めていけば、いずれはDX推進の内製化も可能です。

協働によりDXを推し進める企業が増えれば、社会全体のDXが進み、私たちの働き方や生活はより良いものへと変革されていくでしょう。

DXが必要とされる背景

企業がDXを進めるべき理由は、時代の変化に迅速に対応するためです。特に老朽化したシステムの存在や維持コストの増大は深刻な課題となっています。さらに、将来を予測しにくいVUCA時代において、柔軟で持続的な成長を実現するにはDXが欠かせません。

レガシーシステムのブラックボックス化

レガシーシステムとは、過去の技術や仕組みで構築され、長期間にわたり使われ続けている旧型のシステムを指します。最新の技術を適用しにくく、セキュリティ面でのリスクを抱える点が大きな特徴です。

長年の運用の中で修正や更新がくり返され、さらに担当者の異動や退職が重なることで、システム全体を理解できる人材がいなくなるケースは少なくありません。その結果、内部の構造が不明瞭になり、ブラックボックス化が進んでしまいます

ブラックボックス化したシステムは、運用やメンテナンスの難易度が高まり、障害やセキュリティインシデントが起きた際の対応も遅れがちです。柔軟性を失ったレガシーシステムは市場の変化に対応できず、企業の競争力を低下させる要因となります。

増大するレガシーシステムの維持コスト

レガシーシステムはブラックボックス化していることが多く、維持に莫大なコストが発生します。メーカーのサポートがすでに終了しているケースも多く、その場合は延長サポートを契約するために高額な費用が必要になります。自社で対応する場合でも、専門人材を確保するための人件費が重くのしかかります。

さらに、システムの老朽化に伴い不具合が発生する頻度が高まり、メンテナンスの回数も増加します。そのたびに追加のコストが発生し、維持費用は年々膨らんでいきます。

このように維持コストが増大すると、新たなシステムへの移行をはじめとする「DX投資」に回せる予算が不足してしまいます。結果として、老朽化したシステムに依存し続ける悪循環に陥りかねません。レガシーシステムは企業の将来の競争力を確保するうえで、大きな足かせとなってしまうのです。

VUCA時代の到来

VUCA時代とは、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を組み合わせた言葉です。将来の予測が難しく、社会や市場の状況が常に変化し続ける現代を象徴する表現として使われています。

このような時代を生き抜くためには、環境の変化を素早くとらえ、柔軟に対応できる体制が欠かせません。従来の仕組みにとどまるのではなく、デジタル技術を活用してビジネスのスピードを高め、ビジネスモデルを刷新し続ける取り組みが求められます。

その実現において重要な役割を果たすのがDXです。DXにより業務やサービスを変革することで、不確実な状況にも適応し、持続的な競争力を確保することが可能になります。

DXを推進するメリット

DXを進めることで得られる効果は多岐にわたりますが、大きく分けると「稼ぐ力を伸ばす」「効率と経営スピードを上げる」「守りを固める」の3つの観点に整理できます。

DXは売上や顧客満足度を高める取り組みだけでなく、業務効率化や競争力強化といった側面でもメリットがあり、企業成長の基盤を支える重要な要素となります。

稼ぐ力を伸ばす

DXは単なる効率化にとどまらず、新たな価値を生み出す力を企業にもたらします。ビジネスモデルを進化させたり、新しい収益源を創出したりすることが可能になります。また、顧客体験を向上させることでリピーターやファンを増やし、売上の拡大にもつながります。

ビジネスモデルの改善と創出

DXにより、企業は既存の事業を強化しながら新しい収益源を生み出せます。データ活用やオンライン基盤の整備によって、これまで把握できなかった顧客ニーズや潜在的な市場を発見できるからです。

例えば、販売履歴や利用状況のデータを分析することで、顧客ごとに最適化したサービスを提供したり、新しい商品カテゴリーを開発したりすることが可能になります。このように、DXは既存事業の延長線上にある改善にとどまらず、まったく新しいビジネスモデルを創出するきっかけにもなります。

顧客体験の向上

DXを通じて顧客体験を高められます。顧客行動データを分析することで、一人ひとりに合った商品やサービスを提案でき、よりパーソナライズされた体験を提供できるからです。

顧客満足度の向上は、リピート利用や長期的な関係構築につながります。自社への信頼が高まり、自社のファンと呼べる状態になった顧客は、新しい顧客を連れてきたり、SNSや口コミサイトで商品やサービスに対してポジティブな評価を書いたりしてくれることもあります。

顧客体験の向上はこのように、UGC(※)の増加やファンマーケティングにもつながります。

※UGCとは
UGC(User Generated Content)は「ユーザー生成コンテンツ」のことで、一般ユーザーが自社の商品やサービスについて、自ら制作・投稿したコンテンツです。SNSに商品の画像を投稿したり、口コミサイトでポジティブな口コミを書いたりしたものが、UGCにあたります。

効率と経営スピードを上げる

DXは、企業の業務を効率化し、経営判断を迅速に行える環境を整えます。デジタル技術を活用することで、無駄な作業を削減しながら生産性を高め、同時に意思決定のスピードと精度を向上させることが可能になります。

業務効率化とコスト削減

DXを推進することで、自動化やデータ活用により業務のムダを減らし、コストを削減できます。これまで手作業でしていた処理や、部門ごとに重複していた業務をデジタルに置き換えることで、人の負担を軽減できるからです。データ活用によりムダな作業や業務のボトルネックを特定できることも、効率化やコスト削減につながります。

その結果、社員はより付加価値の高い業務に集中でき、企業全体の生産性向上が可能です。

生産性と意思決定の質とスピード向上

DXにより、部署ごとに分散していた情報を統合し、リアルタイムで可視化できるようになります。これにより現場では必要な情報を即座に把握でき、生産性が向上します。

現場の生産性が高まることにより、経営判断に必要な情報の質と量、情報のリアルタイム性も高まります。経営層はより正確なデータに基づいて判断できるため、意思決定のスピードと質の両方を高められます。

守りを固める

DXは攻めの成長戦略だけでなく、企業を守る基盤づくりにも役立ちます。競争力を維持し、多様な働き方に対応しながら、リスクへの備えを強化できます。

競争力の強化

DXを進めることで、企業は市場変化に素早く対応できるようになります。

データを活用すれば顧客ニーズや市場動向をいち早く捉え、競合より先に施策を打つことが可能です。さらに、オンラインサービスやパーソナライズされた体験を提供することで、他社にはない差別化された価値を築けます。先述した効率化やスピード向上により、コスト競争力も高まります。

DXにより新しいサービスや顧客にとってより便利な仕組みを提供することは、顧客のロイヤルティの向上につながり、持続的な優位性を確保できます。

多様な働き方への対応

DXによりテレワークやクラウド環境が整えば、社員は場所や時間に縛られずに働けます。柔軟な働き方を実現することで、育児や介護と仕事の両立がしやすくなります。優秀な人材を幅広く確保できるのはもちろん、私的な事情による退職も減らせるでしょう。

これにより組織の多様性が高まり、企業全体の競争力強化にもつながります。

リスク管理の強化

DXによりデータの蓄積・分析基盤を強化することで、データのさらなる利活用が可能になります。これにより、リスクを早期に発見し、被害を最小限に抑えられます。

データ分析により異常やその兆候を数値として把握できるため、問題が大きくなる前に対応できます。例えば、設備の稼働データから故障の予兆を検知したり、不正アクセスの兆しを早期に察知したりすることで、事業の継続性を高められます。

DX推進を阻む課題

DXは企業成長に欠かせない取り組みですが、現実には多くの壁があります。人材やスキルの不足、経営層の理解不足、組織構造の硬直などがその代表例です。さらに、支援サービスの限界もあり、こうした課題を克服しなければDXは進みません。

社会全体のDX人材不足

DXを推進するうえで最も深刻な課題の一つが人材不足です。データ分析やクラウド活用、AI技術の実装などを担える人材は社会全体で需要が急増しており、供給が追いついていません。そのため、多くの企業が人材獲得競争に直面しています。

このように、DX人材は需要過多の状況にあり、企業は好待遇や柔軟な働き方を提示して人材を確保しようとしています。その結果、好条件を提示できる大企業に人材が集中しやすく、中小企業では採用が困難になりやすいです。こうした偏りは、社会全体でのDX推進の遅れにつながる大きな要因となっています。

DXリテラシーとスキルの不足

DXを推進するには基礎的な知識やスキルが欠かせません。しかし、現場や経営層にリテラシーが不足している場合、そもそも何から取り組むべきか判断できず、計画の段階で立ち止まってしまいます。

新たに人材を採用して補おうとしても、DXへの理解や知識が浅いため、どのような人材を探せばよいのか、基準を定めることすら難しいのが現実です。結果として採用活動がうまくいかず、既存社員を育成する体制も整わないまま、DX推進が遅れてしまいます。

経営層の理解と決意の不足

DXが進まない要因の一つに、経営層の理解不足があります。DXを単なるシステム導入と誤解し、経営戦略の中核に据えられていないケースは少なくありません。これでは全社的な取り組みにつながらず、現場任せのかたちで形骸化してしまいます。

また、DXの本質を理解できていないと、市場や時代の変化を見誤ります。本来は中長期で指数関数的に効果を生む取り組みであるにもかかわらず、短期的な成果を求めて途中で方向転換してしまうこともあります

このように、投資対効果が見えにくいことから判断を先送りし、結果として競合に遅れを取るリスクも大きいです。経営層が強い決意を持ち、長期的な視点でDXを推進する姿勢がなければ、成果を上げることは難しいでしょう。

現場・組織・仕組みの反抗/構造問題

DXを進める際には、現場や組織の構造的な問題が大きな障害となります。長年のやり方を変えたくないという現場の反発は根強く、これが新しい仕組みの導入を遅らせる原因になります。

また、部門ごとにデータやシステムが分断されている縦割りの構造では、全社的な視点での改革が進みにくいです。部門間の利害調整に時間がかかり、スピード感のある変革が難しくなります。

加えて、古い基幹システム(レガシーシステム)の存在も大きな壁です。レガシーシステムは新しい仕組みと連携しづらく、DXの足かせになってしまいます。こうした現場・組織・仕組みの問題を解消することが、DXを成功に導く鍵となります。

DX支援サービスの不足と限界

DXに関するリテラシーやスキルが不足している企業、自社でのDX人材の確保が難しい企業では、DX支援サービスの活用が有効です。支援サービスを活用することで、DX推進の環境が整っていない企業でも、環境を整えながらDXを推し進めていけます。

ただ、DXを推進するにあたっては、一部の工程だけを支援するサービスでは不十分です。大手企業のようにDXがある程度進んでいる場合には、データ分析など特定領域をサポートする専門会社でも効果を発揮できます。しかし、中堅・中小企業の場合は状況が異なります。限られたリソースの中で全体最適を図る必要があるため、伴走型やハンズオンでロードマップを描きながら、ワンストップで支援できるサポーターが欠かせません

また、DXを成功させるには、経営層や現場、株主、協働する他社などを含むステークホルダー全員の理解と協力が不可欠です。単に技術を導入するだけではなく、クライアントとそのステークホルダーを教育し、変革に必要な知識を浸透させながら進めていく必要があります。

現在のDX支援サービスの多くは部分的な支援にとどまり、経営層だけ、あるいは現場だけに関与するケース、ノウハウの提供のみだけで実際にはプロジェクトを推進しないケースも少なくありません。その結果、全体最適に至らず成果が限定的になってしまうのです。こうした背景から、実際に組織の内側に入り込み、教育と推進を両立できるハンズオン型の支援が強く求められています。

企業におけるDXの導入例

DXはさまざまなかたちで企業活動に取り入れられます。ここでは代表的な取り組みとして、請求や契約の電子化、コミュニケーション手段の転換、ビジネスモデルの変革といった導入例を紹介します。

請求や契約の電子化

請求書や契約書を電子化する取り組みは、紙でのやり取りをなくし、業務を効率化するために重要です。従来は印刷や郵送、押印といった手間がかかっていましたが、電子化により作業時間やコストを削減できます。

この取り組みによって請求や契約のスピードが向上し、処理ミスも減ります。さらに、電子データとして管理できるため検索や再利用が容易になり、業務全体の正確性と効率性が高まります。

メールからビジネスチャットへの移行

メール中心のコミュニケーションから、ビジネスチャットへ移行する取り組みも進んでいます。チャットならリアルタイムでやり取りができ、情報共有のスピードを高められます。このような取り組みは、特にチーム単位での共同作業やリモートワークにおいて有効です。

チャットの導入によって意思決定が早まり、業務の停滞を防げます。また、情報がスレッド形式で整理されるため、必要な情報をすぐに確認でき、業務効率の向上につながります。

デジタル技術を活用したビジネスモデルの改善・創出

デジタル技術を活用して既存のビジネスモデルを改善したり、新規事業を展開したりすることもDXです。データ分析やオンラインサービスの強化により、顧客のニーズを細かく把握し、それに応じたサービスを提供できます。

これにより顧客満足度が高まり、リピーター獲得や新しい収益源の確立につながります。さらに、従来にはなかった販売チャネルやサービス形態を構築でき、企業の成長を加速させる効果もあります。

DX推進の流れ

DXを成功させるには、段階を踏んで計画的に進めることが重要です。現状を分析し、ロードマップを描いたうえで全体設計をしなければなりません。そのうえで実行から運用、そして展開へと進めていく流れが基本です。

STEP1:現状分析・ロードマップ作成

DX推進の第一歩は、目指すゴール像を明確にすることです。将来どのような姿を実現したいのかを整理したうえで、現状の業務プロセスやシステムを把握し、課題を洗い出します。

抽出した課題に対して、どのようなデジタル技術や取り組みで解決できるのかを検討し、それを段階的に実行できるロードマップへと落とし込みます。このプロセスを丁寧に進めることで、DXの取り組み全体に一貫性と実現性を持たせられます。

STEP2:全体設計

現状分析とロードマップを踏まえたうえで、次に進めるのが全体設計です。ここでは、目指すビジョンを中心に据え、それを達成するための経営戦略を具体化します。

さらに、その戦略を実行するために必要な組織体制やオペレーションの仕組みを整え、基盤となるシステムの設計も進めます。全体を一貫して設計することで、部分最適に陥らず、企業全体でDXを推進できる環境が整います。

STEP3:実行(開発)導入

全体設計をもとに、DX推進に必要な具体的なタスクを設定し、実行に移します。業務改善の施策やシステムの要件定義から開発までを進め、計画を実際のかたちに落とし込む段階です。

ただし、単に仕組みやシステムを導入するだけではDXは定着しません。経営目標を達成するためには、組織文化や風土のレベルで、新しい取り組み根付かせることが欠かせません

必要に応じて組織体制の改善や人材採用を進めましょう。自社での人材確保が難しいなら、外部の支援サービスを活用してDX人材をアサインすることも有効です。こうした取り組みを組み合わせることで、DXは企業の中に浸透し、実効性を持った変革へとつながります。

STEP4:運用維持

導入したシステムやオペレーションを定着させるには、継続的な運用と改善が欠かせません。この段階では、DX推進を担うリーダー(PMやPMO)が中心となり、各ステークホルダーと密に連携します。

現場から改善点や新たな要望を引き出し、適切に反映していくことで、システムや仕組みはより現実に即したかたちへと進化します。こうした取り組みにより、DXが一過性の施策ではなく、組織全体に根付いた持続的な改革へとつながります。

STEP5:展開

DXの効果を持続的に高めるには、運用維持を通して収集したデータを活かし、他領域へ展開することが重要です。この段階では、これまでに収集したデータを活用し、サービスや商品、オペレーション、組織といった各領域で高速にPDCAを回せる体制を整えます。

具体的には、既存サービスの改善や新サービスの開発に加え、業務プロセスの見直しや組織運営の強化など、幅広い領域で改善を継続します。さらに、RPAやAIを活用してオペレーションを半自動化すれば、業務の効率と品質の両方を向上させ、企業の競争力を一層高められます。

DXに関するよくある質問

DXは業務効率化や新しいビジネスモデルの創出などの幅広い分野で語られるテーマである一方、誤解や疑問も多く見られます。ここではDXに関して特に寄せられることの多い質問を取り上げ、DXの基本をわかりやすく解説します。

「Digital Transformation」の略なのに「DX」なのはなぜ?

「trans-」を「X」で表すのは欧米でよく見られる略し方です。そのため「Digital Transformation」は「DT」ではなく、「DX」と表記されるのが一般的になりました。

DXを進めないとどうなる?

DXを進めなければ、市場や顧客の変化に取り残されてしまうでしょう。顧客体験も時代遅れとなり、競合に顧客を奪われます。さらに、テレワークをはじめとする柔軟な働き方を求める人材に選ばれにくくなり、人材定着も難しくなります。また、レガシーシステムや非効率な業務フローに縛られることでコストが増大し、収益性の低下も招きかねません。

ITツールを導入すればDXになる?

ITツールの導入だけではDXとはいえません。ツール導入はDXの一部にすぎず、効果も限定的です。DXとはツールを活かしてビジネスモデルや働き方そのものを変革することであり、その先に初めて大きなメリットが生まれます。

DXは喫緊の課題!自社推進が難しい場合は支援サービスの利用を

DXとはデジタル技術を活用して企業や組織を変革する取り組みです。効率化や収益力の強化、新しい働き方の実現など多くのメリットをもたらします。変化が激しい市場や社会で競争力を維持するために、DXは今や欠かすことのできない取り組みとなっています。

その一方で、中堅・中小企業にとって、自社だけでDXを進めるのは容易ではありません。だからこそ、信頼できるDX支援サービスを活用し、外部の力を取り入れながら推進することが有効です。

ドットコンサルティングの強みは、伴走型でワンストップの支援ができる点にあります。大手企業であれば特定分野のサポートだけでも効果を発揮しますが、中堅・中小企業には部分的な支援よりも全体を見据えたロードマップ設計と実行支援が必要です。

ドットコンサルティングは課題の抽出から解決までを一貫して支援できる体制を整えています。私たちはアドバイザーにとどまらず、実際に現場へ入り込みハンズオンで支援します。必要に応じてクライアントの従業員を教育しながら、各ステークホルダーの間に立ち、プロジェクトを強力に推進していくことが可能です。

エンジニア出身でPMを担える人材が在籍していることも大きな特徴です。多くのDXプロジェクトが失敗するのは、技術に偏りすぎてビジネスを理解しない、あるいは反対に技術に疎いコンサルが関与しているためです。ドットコンサルティングでは、技術とビジネスの双方に精通した人材がチームを組み、ステークホルダー間の橋渡しをしながらプロジェクトを前進させます

DXは待ったなしの課題です。もし自社だけでの推進に不安があるなら、ぜひ、ドットコンサルティングの支援を検討してください。現場に入り込みながら課題解決をリードし、確実に成果を出すための伴走型パートナーとして、全力でサポートいたします。